透析が必要と言われたら~腎臓移植、2つの透析療法、あるいは透析はしないという選択肢~
当院の目標はもちろん腎臓の機能をできるだけ守ってご自身の腎臓で問題なく日常生活が送れることであり、これを目標として伴走したいと考えております。しかし腎臓の機能低下を完全に止めることは難しいことも多く、腎機能が10%以下となってくると様々な症状が出てきます。腎臓は血液をろ過して老廃物を尿へ捨てる仕事をしていますので、腎臓が弱ってくると老廃物を体外へ捨てることができず体内に溜まってきてしまいます。そのような場合に弱ってしまった腎臓の代わりに血液の老廃物を体外に排出するための治療を腎代替療法といいます。腎代替療法選択外来とは、腎臓に疾患がある方の腎機能を出来るだけ維持すること、それでも腎機能が低下してきた際に将来の治療法についてきちんと考えて選択するための専門外来です。腎代替療法には以下の主な方法があります。
腎臓移植(KTx:Kidney Transplantation)
ご家族からの生体腎移植や献腎移植にて機能の保たれた腎臓を移植することで、腎機能を取り戻す方法です。最も腎臓の機能が正常な方と近い日常生活を送ることが可能になりますが、大きな手術が必要となること、移植された腎臓はご本人にとっては異物となりますので拒絶反応のリスクがあり免疫抑制剤が必要になることなど、移植ならではの特徴がございます。私は東京女子医科大学病院にて腎臓移植前後の透析管理やドナーの方の診療を行った経験がございますので、それをもとにアドバイスさせていただきます。

血液透析(HD:hemodialysis)
血液を取り出して機械でろ過を行い、老廃物や余分な塩分・水分を取り除いた血液をお体にお返しすることで腎臓の代わりに老廃物を体外へ排出する治療です。1度老廃物を取り除いてもまた溜まってしまうため、腎臓の機能自体が回復しない限りは継続的に行う必要があります。一般的には週3回病院へ通院し透析を行う形になります。通常の採血では1分間に10ml程度の血液を採取しますが、透析では1分間に100-300ml程度血液を出し入れする必要があり、その出入口となるのがシャントなどのバスキュラーアクセスです。当院では維持透析は行っておりませんが、バスキュラーアクセスに関する治療および近隣の透析医療機関と連携して診療を行っております。

腹膜透析(PD:Peritoneal Dialysis)
お腹の中に管を入れ、そこを通してきれいな水(腹膜透析液)を入れることで、腸の間にある腹膜の血管を通して老廃物が腹膜透析液に出ていくことで透析を行う方法です。腹膜透析液をご自身で1日数回(最近では寝ている間に行う方法もあります)入れ替えることで透析を行いますので、血液透析と比較して通院の回数が少ないこと(週3回に対して月1-2回程度)がメリットになります。一方でご自身が主体となって治療を行う、管を通して細菌が入り感染症(腹膜炎といいます)を起こす可能性がある、などの問題があります。

保存的腎臓療法(CKM:Conservative Kidney Management)
一般的に腎代替療法と言えば上記3つを指しますが、新しい治療概念として保存的腎臓療法(CKM)が提唱されました。心不全や肝不全といった臓器不全は通常命に関わる重大な病態で、現在でも臓器移植以外の治療法は確立していません。血液透析や腹膜透析といった腎代替療法は臓器不全の治療として確立した素晴らしい治療法です。しかしもちろん24時間休まず血液をろ過してきれいに保っている腎臓の代わりをする治療ですので、気軽にできる治療ではなく通院など治療のご負担はとても大きいものがあります。ご高齢の方や、合併症を抱えられていて治療の負担が大きい方などにおいて、生活の質(QOL)を重視した選択肢の一つとしてこのような方法をご提案させていただくことがあります。CKMとは透析療法を行わず、お薬や食事の調整によって、できるだけ症状を抑えてご自身の腎臓で生活を続けることを目標とした治療です。もちろん一度CKMを選択したからといって透析療法を行うという選択肢が全くなくなるというわけではなく、その時の症状やご自身、ご家族のお気持ちの変化に合わせていつでも見直すことができます。当院ではこのような選択肢を悩んでいる方にも、ご希望に沿った最適な医療をご提案していきたいと考えています。
